はじめに
今回の記事では、なぜ「またあなたと」のイベントがICEYのエンディングになるのかを考察します。
記事の性質上ネタバレには配慮していません。
また、つじつま合わせが必要になった場合、私の好きなようにします。
なお、筆者のクトゥルフ知識のほとんどは以下の二点から得られたものになります。
- ネット検索
- 手元の『クトゥルフ神話TRPG』
あらかじめご了承ください。
目次
ICEYの二つの見方
ICEYというゲームは、メタフィクションとしてもメタフィクションとしなくても成立するようになっています。
少なくとも、今現在私の理解している設定の範囲ではそのように見えます。
『ICEY』の中で、君が演じるのはICEYであり「君自身」ではない。 しかしそれすらも絶対ではなく、君は「君自身」を演じ、「君自身」としてICEYを操作することもできる。
そう、これはアクションゲームの皮をかぶった罠なのだ。
という説明文も、メタフィクションとして楽しむことも、メタフィクションとしないで楽しむことも推奨しているように見えます。
そのため、
その両方について考察をしていきます。
メタフィクションとしてのエンディング
こちらについては前回の記事で考察しました。
この記事では考察の末、
「終わりのないゲームに魂を置き続けるな。ちゃんと現実に魂を置け」というメッセージを伝えるため
という結論を導きました。
メタフィクションとしないエンディング
メタフィクションとしないエンディング、これはパンドラの箱ENDでしょう。
パンドラの箱に関する実績があることから、作品のモチーフとして意識している可能性はあります。
それでは、ユダの行いが引き金となって引き起こされた/引き起こされようとしている災厄を紹介していきましょう。
災厄その1:ネクロノミコン
ICEYの世界では、ユダが我欲のために死霊の抄本つまりネクロノミコン(参照)に手を出しました。
クトゥルフ神話的な物語において様々な使われ方をする魔道書に関わってしまった事で、災厄が始まってしまったと言えるでしょう。
災厄その2:ニャルラトホテプの暗躍
そして、死霊の抄本を改竄しI™システムの仮想都市に教団員の記憶を移植しました。
I™システム、つまり人工知能インターフェースに人間を接続するのは『I DREAM OF WIRES』(参照)を彷彿させます。
『I DREAM OF WIRES』のような展開ならば、関わった人間を狂気に落とし込むだけで済みます。
ですが、DLC「UCEY's Awakening」(参照)にて、黄衣の王がアザトースを信奉する発言をしています。
ニャルラトホテプの化身、その中でもチクタクマン(参照)に類するものが動いているということと、それがアザトースを降臨させようとしている可能性があることは、災厄に値するでしょう。
災厄その3・4:90億の神の御名とHASTUR
『90億の神の御名』(参照)では、神の御名を全て明かしたこと星が次第に消え始める、という結末を迎えています。
この現象が何であるかは作中で明言されていないようですが、私は人類終了の予兆と受け取りました。
ICEYでは、「黒い星が昇る」という表現で星が消えていくことを例えているかもしれません。
▲死霊の抄本でも神の御名でも黒星がすべてを無に帰す模様
また、神の御名を明らかにする過程でHASTURの名が顕現しました。名が顕現しただけではありますが、災厄を引き起こしたり人類の驚異となる可能性は大いにあります。
以上の四つが、現在ICEYの世界で対処が必要そうな災厄となっています。人類に未来があるのかが怪しいレベルのものばかりです。
設定でこれだけの災厄を用意してしまったため、
「ユダの行いによって様々な災厄が引き起こされてしまった。だが、自我が目覚めたICEYという希望も生まれた」
というパンドラの箱のような構図にしないと、人類の滅亡が予感される後味の悪いエンディングになってしまいます。
▲驚きの白さ
最後に
ICEYというゲームは、今作で完結としても完結としなくてもいいよう、予防線を貼っているゲームだと感じています。
モチーフとなった短編やクトゥルフ神話作品のように、人類に対する驚異を描写して恐怖感を煽るところで終わりとする作品もあります。
それらのモチーフのようにこのようなエンディングにした、と言い訳することもできそうです。
この見方についてはジャンルに対する私の偏見かもしれませんが。
ちなみに続編については、「UCEY's Awakening」の内容をメタに受け取るならば、出そうだと思います。
▲2018年8月17日時点で全プラットフォーム合計200万本突破(参考)
▲Steamページにある画像
インディーズゲームの感覚は全くわからないのですが、様々なイベントで賞も獲得してそうですし、ICEYという作品は実際成功したのでしょう。
このエンディングから次のPROJECTにどのように繋げるのかを、楽しみにしています。